生活習慣病シリーズ
コレステロールの薬は一生飲む?|LDLが下がったらやめられるのでしょうか
「薬を飲み始めたら、一生やめられないのですか?」
健診でLDLコレステロールが高いと指摘され、薬による治療をご提案すると、
「コレステロールの薬は、一度飲み始めたら一生ですか?」
「数値が正常になったら、薬をやめてもよいですか?」
「薬に頼る体になりませんか?」
と聞かれることがあります。
結論から申し上げると、コレステロールの薬を飲み始めた人が、全員一生飲み続けなければならないわけではありません。
生活習慣の改善や体重減少などによって、薬を減らしたり、中止したりできる方もいます。
一方、薬を飲んでLDLコレステロールが下がった場合、その多くは、
脂質異常症が治ったのではなく、薬が効いて数値が下がっている状態
です。
自己判断で薬を中止すると、LDLコレステロールが再び上昇することがあります。
薬への依存で下がっているわけではありません
コレステロールの薬を飲み続けると、
「体が薬に慣れてしまう」
「薬がないとコレステロールを下げられない体になる」
と心配される方がいます。
しかし、コレステロールの薬は依存性のある薬ではありません。
薬を中止した後にLDLコレステロールが上がるのは、薬に依存したからではなく、もともと持っていた体質や代謝の状態に戻るためです。
薬によって異常の原因が完全に消えたのではなく、薬を使って数値を適切な範囲に保っていたということです。
数字を下げることだけが治療の目的ではありません
LDLコレステロールは、一般に「悪玉コレステロール」と呼ばれています。
LDLコレステロールが高い状態が長く続くと、血管の壁にコレステロールがたまり、動脈硬化が進みやすくなります。
その結果、将来的に、
- 狭心症
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
- 末梢動脈疾患
などを発症する危険性が高くなります。
コレステロールの薬は、健康診断の数字をきれいにするためだけに飲むものではありません。
将来の心筋梗塞や脳梗塞から、心臓、脳、血管を守るための治療です。
LDLコレステロールを下げることは、そのための手段です。
コレステロールの薬を、必ず一生飲む必要はありません
コレステロールの薬は、一度飲み始めたら、何があっても一生飲み続けなければならない薬ではありません。
ただし、すでに心筋梗塞や脳梗塞などを発症した方と、まだ発症していない方では、薬を飲む意味が異なります。
心筋梗塞や脳梗塞を発症した方
すでに心筋梗塞や、動脈硬化が関係する脳梗塞などを発症した方では、コレステロールの薬は、次の梗塞を予防するための重要な治療です。
一度梗塞を起こした血管には、再び梗塞を起こす危険性があります。
この場合は、単に健康診断の数値を下げるためではなく、心筋梗塞や脳梗塞の再発を防ぐために、原則として内服を継続する意味があります。
薬を中止する場合には、再発リスクを十分に理解したうえで判断する必要があります。
心筋梗塞や脳梗塞を発症していない方
まだ心筋梗塞や脳梗塞を発症していない方では、将来の発症を予防することが治療の目的です。
薬から得られる利益は、
- 年齢
- LDLコレステロール
- 高血圧
- 糖尿病
- 腎機能
- 喫煙
- 肥満
- 家族歴
- 頸動脈プラークの有無
などによって異なります。
若く、今後長く生活していく方ほど、長期間にわたって血管を守る意味があります。
一方、人生の最終段階に近づき、余命、フレイル、認知機能、薬の負担、ご本人が望む生活などを考えたとき、予防目的の薬をいつまでも漫然と続ける必要がない場合もあります。
その段階では、
「将来の病気を予防すること」
だけでなく、
「今の生活をできるだけ楽にすること」
「薬の数を減らすこと」
を優先する選択もあります。
ただし、「何歳になったらやめる」「人生の最後の10年間は不要」と一律に決められるものではありません。
その方の健康状態と価値観を確認しながら、続けるか、中止するかを一緒に考えます。
LDLが正常になったら、薬をやめてもよいのでしょうか?
薬を飲み始めて、LDLコレステロールが正常範囲まで下がると、
「もう正常だから、薬は必要ない」
と思うかもしれません。
しかし、その数値は、薬を飲んでいる状態での結果です。
薬をやめても正常な状態が続くかどうかは、実際に経過を確認しなければ分かりません。
特に、
- もともとのLDLコレステロールが非常に高かった
- 糖尿病がある
- 高血圧がある
- 喫煙している
- 慢性腎臓病がある
- 頸動脈にプラークがある
- 狭心症や心筋梗塞の既往がある
- 脳梗塞の既往がある
- ご家族に若くして心筋梗塞を発症した方がいる
場合には、薬を中止することで、将来の心筋梗塞や脳梗塞の危険性が高くなる可能性があります。
同じLDLコレステロールの数値でも、その方が持つ危険因子によって治療目標は異なります。
薬をやめられる可能性があるのはどのような場合ですか?
次のような変化があった場合には、薬の減量や中止を検討できることがあります。
- 体重が減少した
- 食生活が大きく改善した
- 運動習慣が定着した
- 飲酒量が減った
- 糖尿病の状態が改善した
- LDLを上げていた別の病気が改善した
- LDL上昇に関係する薬が変更された
- もともとの動脈硬化リスクが高くない
ただし、薬を減らせるかどうかは、LDLコレステロールの数値だけでは判断できません。
薬を減量または中止する場合も、一定期間後に血液検査を行い、LDLコレステロールが再び上昇していないか確認することが大切です。
食事だけで下がらないのは、努力不足ではありません
LDLコレステロールが高い方の中には、
「食生活が悪かったからだ」
「自己管理ができていないと思われるのが嫌だ」
と感じる方がいます。
しかし、LDLコレステロールは食事だけで決まるものではありません。
- 生まれ持った体質
- 遺伝
- 加齢
- 閉経
- 甲状腺機能低下症
- 糖尿病
- 腎臓病
- 一部の薬剤
なども関係します。
食生活に気をつけていても、体質的にLDLコレステロールが高くなる方はいます。
薬が必要になったからといって、努力が足りなかったという意味ではありません。
若い頃からLDLが高い方は、家族性高コレステロール血症にも注意
若い頃からLDLコレステロールが高い方や、未治療のLDLコレステロールが非常に高い方では、家族性高コレステロール血症の可能性があります。
特に、
- ご家族にもコレステロールが高い方が多い
- ご家族に若くして心筋梗塞や狭心症を発症した方がいる
- アキレス腱が太いと指摘された
- 薬を飲んでもLDLが十分に下がらない
という場合には注意が必要です。
家族性高コレステロール血症では、若い頃から長期間にわたって高いLDLコレステロールにさらされるため、動脈硬化が早く進むことがあります。
生活習慣の改善だけで十分に下げることが難しく、継続的な薬物治療が必要になる方も少なくありません。
副作用が心配な方へ
コレステロールの薬について、
「筋肉が痛くなると聞いた」
「肝臓に悪いのでは?」
と心配される方もいます。
薬の種類によっては、筋肉痛や肝機能異常などが起こることがあります。
ただし、多くの方は問題なく治療を続けています。
当院では、治療開始後に症状を確認し、必要に応じて血液検査を行います。
副作用が疑われる場合には、
- 薬の量を調整する
- 別の種類へ変更する
- 複数の薬を組み合わせ、1種類あたりの量を調整する
などの方法を検討します。
心配だからと自己判断で中止するのではなく、まずご相談ください。
コレステロールの薬を飲むかどうかは、人生のリスクマネージメントです
コレステロールの薬を飲むか、飲まないか。
私は、これは単に健康診断の数字を下げるための選択ではなく、自分の人生に対するリスクマネージメントだと考えています。
心筋梗塞や脳梗塞を発症する危険性を少しでも下げたいのであれば、医学的な適応がある方は、コレステロールの薬を飲む意味があります。
毎日、小さな薬を1錠飲む。
それだけで、将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクを下げられる可能性があります。
私は、人生の最期の朝まで、自分の足でトイレへ行きたい。
人生の最期の前夜まで、自分でお風呂に入りたい。
そして、できる限り最後まで、
- 自分の手足を自由に動かしたい
- 好きなものを自分で食べたい
- オムツを使わずに過ごしたい
- 誰かの介助を受けず、自分のことを自分でしたい
- 自分らしい生活を続けたい
と願っています。
心筋梗塞や脳梗塞は、命を奪うだけの病気ではありません。
命が助かっても、手足の麻痺、言語障害、嚥下障害、心不全などが残り、それまで当たり前にできていた生活が大きく変わることがあります。
私たちは、これまで数多くの大先輩方の人生を通して、そのことを教えていただいてきました。
私自身も、コレステロールの薬を飲んでいます
私は、自分自身の心筋梗塞や脳梗塞のリスクを少しでも下げたい。
人生の最期まで、できる限り自分のことを自分でしたい。
そう願って、私自身もコレステロールの薬を飲んでいます。
薬を飲むこと自体が目的ではありません。
将来も自分らしく、自立した生活を続けるために、今できる対策をしておく。
それが、私がコレステロールの薬を飲んでいる理由です。
薬を飲むかどうかを決めるのは、患者さんご本人です
昔は、医師が、
「必要だから飲みなさい」
と治療方針を決め、患者さんがそれに従うという診療が少なくありませんでした。
しかし、現代の医療では、患者さんの意思が尊重されます。
コレステロールの薬を飲み続けるか、中止するかを最終的に決めるのは、患者さんご本人です。
医師の役割は、
- 薬を飲むことで期待できる利益
- 薬を中止した場合に考えられる危険性
- 副作用や薬の負担
- ほかに選べる治療方法
を分かりやすく説明することです。
その説明を聞いたうえで、患者さんには治療を受けるかどうかを決める権利があります。
当院では、希望されない薬を無理に飲ませることはありません。
「コレステロールの薬をやめたい」
というご希望があれば、その理由を伺い、中止した場合のリスクをご説明します。
そのうえで中止を希望される場合には、患者さんの意思を尊重します。
薬を飲む自由があるのと同じように、薬を飲まない選択をする自由もあります。
ただし、その選択によって、将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクが変わる可能性があります。
大切なのは、薬を怖がって何となく中止することでも、理由が分からないまま漫然と飲み続けることでもありません。
正しい情報を得たうえで、自分がどのような人生を送りたいかを考え、自分自身で選ぶことです。
薬を続けるか迷っている方はご相談ください
コレステロールの薬は、全員が一生飲み続けるものではありません。
しかし、数値が下がったからといって、自己判断で中止してよいものでもありません。
「本当に薬が必要なのか知りたい」
「薬を減らせる可能性はあるのか」
「以前から薬を飲んでいるが、理由がよく分からない」
「副作用が心配で飲めていない」
「薬をやめた場合のリスクを知りたい」
という方は、健診結果や過去の血液検査、お薬手帳をご持参のうえ、ご相談ください。
新宿イーストサイドたけうち内科では、LDLコレステロールの数値だけでなく、一人ひとりの将来の動脈硬化リスク、年齢、健康状態、そして患者さんご自身の希望を確認し、治療方針をご提案します。
当院は、東新宿駅A3出口直結、新宿イーストサイドスクエア地下1階にあります。
薬を飲むこと自体が目的ではありません。将来の心臓、脳、血管、そして自立した生活を守ることが治療の目的です。
新宿イーストサイドたけうち内科
院長 竹内惠理保
脂質異常症・LDLコレステロールのご相談
当院を初めて受診される方もご予約いただけます。
参考
日付: 2026年8月26日 カテゴリ:ブログ












