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生活習慣病シリーズ 血圧の薬は一度飲み始めたら一生?|降圧薬を飲む意味を考えてみましょう

生活習慣病シリーズ

血圧の薬は一度飲み始めたら一生?|降圧薬を飲む意味を考えてみましょう

「血圧の薬を飲み始めたら、一生やめられないんですよね?」

高血圧の診療をしていると、本当によく聞く言葉です。

健診で血圧が高いと言われても、

「一度薬を始めたら一生になるから、まだ飲みたくない」

「薬なしではいられなくなるのでは?」

「私は薬を飲まない主義です」

という方もいらっしゃいます。

まず最初にお伝えしたいのは、

「降圧薬を一度飲み始めたら、必ず一生飲み続ける」というのは正しくありません。

条件が整えば、薬を減らしたり、中止したりできる方もいます。

でも私は、もう一歩違うところから考えてほしいと思っています。


そもそも、何のために血圧を下げるのでしょうか?

血圧を下げる目的は、血圧計に表示される数字をきれいにすることではありません。

大きな目的のひとつは、

血管や臓器を高い圧力から守り、できるだけ長持ちさせることです。

血管には、毎日血液の圧力がかかっています。

その圧力が高い状態が何年、何十年と続けば、血管や心臓、腎臓への負担が積み重なります。

その結果、

  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • 心筋梗塞
  • 心不全
  • 慢性腎臓病(CKD)
  • 大動脈瘤
  • 大動脈解離

などにつながる可能性があります。

車なら、傷んだ部品を新品に交換できます。

しかし、人間の血管、心臓、腎臓はそう簡単には交換できません。

一度大きな病気を発症すると、命に関わるだけではなく、その後の生活の質(QOL)が大きく損なわれることがあります。

だから、高血圧は症状がないうちから管理する必要があるのです。


降圧薬に「依存」するわけではありません

降圧薬を飲み始めたために、身体が薬なしでは血圧を下げられなくなるわけではありません。

薬をやめると血圧が上がることがあるのは、

薬に依存したからではなく、もともとの高血圧が残っているからです。

ですから、

「薬を飲んだら最後」

という考え方をする必要はありません。

必要な時期には薬を使って血圧を下げる。

生活習慣や体重、年齢、病気の状態が変化したら、その時点でまた薬の量を見直す。

私は、それでよいと思っています。


実は「一生同じ降圧薬を飲み続ける」とは限りません

人間の身体は、年齢とともに変化します。

心臓、血管、腎臓にも加齢による変化が起こります。

高齢になると心不全や慢性腎臓病(CKD)などを抱える方も増え、若い頃と同じ血圧、同じ薬の量が適切とは限らなくなります。

体重が減ったり、食事量が変わったり、別の病気が加わったりすることもあります。

その結果、降圧薬を減らしたり、中止したりする必要が生じることもあります。

つまり、

「50歳で降圧薬を始めたら、90歳まで同じ薬を同じ量で飲み続ける」

という話ではありません。

私はむしろ、

一生降圧薬を飲めるくらい元気でいられるなら、それは決して悪いことではない

と思っています。


降圧薬は「将来の自分への投資」だと、私は考えています

これは私個人の考え方ですが、

もし私自身に治療が必要な高血圧があれば、私は降圧薬の内服を受け入れます。

理由は単純です。

将来の脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎臓病などのリスクを少しでも下げたいからです。

毎日薬を飲むことには、多少の手間があります。

薬には副作用の可能性もあります。

費用もかかります。

それでも、それによって将来の大きな病気のリスクを下げられるのであれば、私はその選択をします。

私にとって降圧薬は、

「将来の自分への投資」

です。

そして、

「人生のリスクマネジメント」

でもあります。


「薬を飲まない」という選択にも、リスクがあります

ここは、とても大切です。

薬には副作用がある。

だから薬を飲みたくない。

これは理解できます。

しかし、

「薬を飲まない」という選択が、リスクゼロというわけではありません。

治療が必要な高血圧をそのままにすることにも、将来の脳卒中、心臓病、腎臓病などのリスクがあります。

つまり比較するべきなのは、

「薬を飲む」か「薬を飲まない」か、

だけではありません。

薬を飲むことによるリスクと、治療しないことによるリスク。

この両方です。


今は「医師に言われたから薬を飲む」時代ではありません

昔の医療であれば、

「何を言っているんですか。血圧が高いんだから、ちゃんと薬を飲みなさい!」

と医師が強く治療を勧めることも多かったと思います。

今は、患者さん本人の意思を尊重して治療方針を決める時代です。

「薬を飲みたくない」

という意思も尊重されます。

もちろん、それ自体はとても大切なことです。

一方で私は、

ある意味では、とても厳しい時代になった

とも感じています。

医師が一方的に治療を決めるのではなく、自分自身で説明を聞き、自分自身で判断する。

そして、その選択の結果を最も大きく受けるのは、将来の自分自身だからです。


「薬を飲まない主義」だけで決めてしまわないでください

「私はできるだけ薬を飲まない主義なんです」

というお話も、診察室ではよく聞きます。

その考え方を否定するつもりはありません。

しかし、治療が必要かどうかは「主義」ではなく、できれば医学的なリスクを見て判断してほしいと思います。

血圧はいくつなのか。

家庭血圧はどうなのか。

年齢は。

糖尿病は。

腎機能は。

コレステロールは。

喫煙は。

心臓病や脳卒中の既往は。

こうした条件によって、同じ血圧でも将来のリスクは大きく異なります。

医師の仕事は、

「とにかく薬を飲ませること」

ではありません。

その方にどの程度のリスクがあり、治療によって何を減らせる可能性があるのかを説明することです。

その情報を知ったうえで、最終的にどうするかを一緒に考えます。


生活習慣の改善で、薬を減らせることもあります

もちろん、血圧を下げる方法は薬だけではありません。

  • 減塩する
  • 体重を減らす
  • 適度に運動する
  • 飲酒量を見直す
  • 禁煙する
  • 睡眠を改善する

こうした生活習慣の改善で、血圧が大きく下がる方もいます。

特に肥満のある方では、減量によって降圧薬を減らせることもあります。

ですから当院では、

「薬か、生活習慣か」ではなく、両方を使って将来のリスクを下げる

という考え方を大切にしています。


2025年から、血圧管理の目標も変わっています

日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、一般的な降圧目標として、

診察室血圧:130/80mmHg未満

家庭血圧:125/75mmHg未満

が示されています。

もちろん、やみくもに血圧を下げればよいわけではありません。

年齢、体調、合併症、立ちくらみなどを確認しながら、一人ひとりに合わせて調整します。

重要なのは、

「症状がないから高い血圧を放置してよい」ということではない

ということです。


まず、本当に高血圧なのかを確認しましょう

一方で、健診で一度血圧が高かっただけで、全員がすぐ薬を飲む必要があるわけではありません。

病院や健診では緊張によって血圧が上がる「白衣高血圧」もあります。

そのため当院では、診察室の血圧だけではなく、家庭血圧を重視しています。

本当に高血圧なのか。

生活習慣の改善で経過をみられるのか。

薬を始めた方がよい段階なのか。

他に心血管リスクはないのか。

そこまで確認して、治療方針を考えます。


血圧の薬を一生飲むかどうかは、今日決めなくてよいのです

「薬を飲み始めたら一生だから……」

と考えて、治療そのものから逃げる必要はありません。

今日必要なら、今日治療する。

将来、体重や生活習慣、家庭血圧、身体の状態が変われば、そのときにまた治療を見直す。

それでよいのです。

ただし、血圧が下がったからといって、自己判断で薬を中止することはおすすめしません。

薬が効いているために血圧が正常になっている可能性があるからです。

減量や中止についても、家庭血圧を見ながら医師と相談してください。


高血圧治療は、将来の自分を守るためのリスクマネジメントです

私は、高血圧治療を

「薬を飲むための治療」

だとは考えていません。

目標は、

10年後、20年後もできるだけ元気に生活できる身体を守ること。

そのために、薬が必要なら使う。

生活習慣を改善する。

減らせる状況になれば減らす。

必要がなくなれば中止を検討する。

大切なのは、

薬を飲むことを怖がることでも、薬を飲まないことにこだわることでもありません。

正しい情報を知り、

「薬を飲むリスク」と「治療しないリスク」の両方を比較して、

自分自身で冷静に選択することです。

「血圧の薬を始めるべきか迷っている」

「できれば薬を飲みたくないので相談したい」

「今飲んでいる薬を減らせないか知りたい」

という方も、家庭血圧の記録や健診結果をご持参のうえ、お気軽にご相談ください。

新宿イーストサイドたけうち内科は、東新宿駅A3出口直結、新宿イーストサイドスクエア地下1階にあります。

降圧薬は、今日の数字を下げるためだけの薬ではありません。将来の自分を守るための選択肢のひとつです。

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