健診シリーズ④
健診で尿酸値が高いと言われた方へ|痛風がなくても放置してよいのでしょうか?
「痛風になったことがないから大丈夫」と思っていませんか?
健康診断で、
「尿酸値が高い」
「高尿酸血症の疑い」
「生活習慣の改善が必要」
と指摘されていませんか?
尿酸値が高いと聞くと、
「痛風にならなければ問題ない」
「足の親指が痛くないから大丈夫」
「ビールとプリン体を控えればよい」
と考える方も少なくありません。
しかし、高尿酸血症は痛風だけの問題ではありません。
尿路結石や腎機能障害の原因となるほか、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などを合併していることも多く、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントとも関連します。
さらに、プリン体については、一般に持たれているイメージと実際が大きく異なる食品もあります。
尿酸値はいくつから高いのでしょうか?
血清尿酸値が、男女ともに7.0mg/dLを超える場合、高尿酸血症と診断されます。
尿酸は血液中に溶けていますが、7.0mg/dLを超えると結晶になりやすくなります。
この尿酸塩の結晶が関節にたまり、強い炎症を起こした状態が痛風発作です。
ただし、尿酸値が7.0mg/dLを少し超えただけで、全員がすぐに痛風を起こすわけではありません。
一方で、高い状態が長く続くほど、体内に尿酸塩の結晶が蓄積しやすくなります。
一度の数値だけでなく、
- どの程度高いのか
- いつから高いのか
- 年々上がっているのか
- 腎機能に問題がないか
- 痛風発作や尿路結石の既往があるか
を確認する必要があります。
痛風発作は、実は夏にも多くみられます
痛風発作は、足が冷える冬に多いように思うかもしれません。
確かに、尿酸塩は温度が低いほど溶けにくくなります。そのため、体温の低い足の親指などに結晶がたまりやすくなります。
一方、実際の痛風発作は、夏に多いとする研究が複数あります。
夏は大量の発汗によって脱水になりやすく、腎臓からの尿酸排泄が低下します。血液や尿が濃縮されることも、痛風発作の誘因になると考えられます。
さらに夏には、
- ビールなどの飲酒量が増える
- バーベキューで肉類を多く食べる
- 激しい運動で大量に汗をかく
- サウナ後に水分を取らず飲酒する
- 甘い清涼飲料水を多く飲む
といった条件も重なりやすくなります。
冬の「局所の冷え」だけでなく、夏の「全身の水分不足」にも注意が必要です。
痛風発作は、足の親指だけではありません
典型的な痛風発作では、足の親指の付け根が突然赤く腫れ、非常に強い痛みが起こります。
しかし、痛風発作が起こるのは足の親指だけではありません。
- 足首
- 足の甲
- 膝
- アキレス腱周囲
- 手首
- 肘
などに起こることもあります。
夜間から明け方に突然始まり、数時間で急激に悪化することがあります。
痛風発作を何度も繰り返すと、関節内や皮下に尿酸塩の結晶が蓄積し、痛風結節や関節の変形につながることもあります。
高尿酸血症は、痛風だけの問題ではありません
高尿酸血症は、
- 痛風発作
- 尿路結石
- 腎機能障害
などの原因になります。
また、高尿酸血症の方では、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、慢性腎臓病などを合併していることが少なくありません。
高尿酸血症の方では、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントが多いことも報告されています。
ただし、尿酸そのものが直接の原因なのか、高血圧、肥満、糖尿病、腎機能低下などを伴いやすいためなのかは、完全には分かっていません。
そのため、尿酸値は痛風の指標であると同時に、全身の生活習慣病や心血管リスクを見直すきっかけにもなります。
尿酸値だけを下げれば、すべて解決するという問題ではありません。
お酒を飲まなくても、甘い飲み物でリスクは上がります
「私はお酒を飲まないから、尿酸は大丈夫」
とは限りません。
砂糖や果糖を多く含む、
- 清涼飲料水
- 加糖ジュース
- エナジードリンク
- 甘い炭酸飲料
などは、尿酸値や痛風発症リスクを上げる可能性があります。
これらの飲み物には、プリン体がほとんど含まれていません。
しかし、果糖が体内で代謝される過程で尿酸が作られます。
つまり、プリン体が入っていなくても、尿酸値を上げる飲み物があります。
ただし、無糖飲料や人工甘味料を使用した飲料まで、すべて同じようにリスクが上がるわけではありません。
主に注意が必要なのは、果糖を含む加糖飲料です。
日本人は「尿酸を作りすぎる」より「うまく排泄できない」方が多い
高尿酸血症には、
- 尿酸が多く作られるタイプ
- 尿酸を十分に排泄できないタイプ
- 両方が組み合わさったタイプ
があります。
日本人では、尿酸排泄低下型が約60%を占めるとする報告があります。
そのため、プリン体の多い食品を控えることには意味がありますが、食事だけですべて解決するとは限りません。
尿酸値には、
- 体質や遺伝
- 腎機能
- 肥満
- インスリン抵抗性
- 飲酒
- 果糖の摂取
- 脱水
- 服用中のお薬
なども影響します。
「プリン体だけを避ければよい」と考えず、原因を総合的に見直すことが大切です。
痛風に危ないのは、イクラよりサラダチキン?
プリン体の多い食品を並べてみると、焼き鳥屋さんや海鮮居酒屋さんのメニューに似ていることに気づきます。
一般的な一食分に含まれるプリン体量の目安は、次のとおりです。
焼き鳥屋さんでよく見る食品
- 鶏レバー:約250mg
- 豚レバー:約228mg
- 牛レバー:約176mg
- 牛ハツ:約148mg
- 鶏ささみ:約123mg
- 鶏むね肉:約113mg
- 鶏手羽:約110mg
- 鶏ハツ:約100mg
レバーやハツにプリン体が多いことは、何となく想像できるかもしれません。
意外なのは、鶏ささみや鶏むね肉です。
鶏ささみは低脂肪・高たんぱくで、非常にヘルシーな食品というイメージがあります。
確かに、減量や脂質制限という面では優れた食品です。
しかし、プリン体という視点では決して少なくありません。
「体によいから」と、サラダチキンや鶏ささみを毎日大量に食べている方は、尿酸値にも注意が必要です。
海鮮居酒屋では、イクラより干物やカツオに注意
海鮮居酒屋さんでよく見る食品では、一般的な一食分に次の程度のプリン体が含まれます。
- さんまの干物:約188mg
- カツオ:約169mg
- さんま:約155mg
- マアジの干物:約148mg
- マグロ:約126mg
- マダイ:約80mg
- ホタテ:約46mg
- イクラ:約0.7mg
干物やカツオ、マグロには、比較的多くのプリン体が含まれています。
一方、意外に少ないのがイクラです。
イクラは、
「魚卵だからプリン体が多い」
「痛風には完全にNG」
というイメージを持たれがちですが、実際のプリン体量は非常に少ない食品です。
プリン体は、細胞一つひとつに含まれる核酸に由来します。
イクラは一粒が一つの大きな細胞です。そのため、同じ重量で比較すると細胞の数が少なく、プリン体量も少なくなります。
「魚卵だから、すべてプリン体が多い」というわけではありません。
ただし、イクラは塩分が多い食品です。
プリン体が少ないから、いくらでも食べてよいという意味ではありません。
「ヘルシーそうだから、いくら食べても大丈夫」
「魚卵だから、絶対に食べてはいけない」
と、食品のイメージだけで判断しないことが大切です。
「第3のビールだからプリン体が少ない」は間違いです
ビール、発泡酒、いわゆる第3のビールでは、どれが最もプリン体が少ないのでしょうか?
公表値や測定値の一例を、100mL当たりで比べてみます。
ビール
- ヱビス:約12.0mg
- サッポロクラシック:約11.0mg
- モルツ:約9.0mg
- 一番搾り:約8.6mg
- サッポロ黒ラベル:約7.5mg
- スーパードライ:約6.0mg
麦芽を多く使用したコクのあるビールでは、プリン体も多くなる傾向があります。
ただし、同じビールでも商品による差があり、今回の例では、ヱビスとスーパードライで約2倍の違いがあります。
発泡酒
- 淡麗:約3.4mg
- 本生ドラフト:約3.2mg
- 円熟:約3.1mg
これらの発泡酒は、一般的なビールと比べてプリン体が少なめです。
いわゆる第3のビール
- 麦とホップ:約10.0mg
- 一番麦:約6.5mg
- 金麦:約3.3mg
ここで意外なのが、いわゆる第3のビールです。
「安価な第3のビールなら、麦芽が少なく、プリン体も少ないだろう」と思われがちです。
しかし、商品による差が非常に大きくなっています。
麦とホップのプリン体量は約10.0mgで、一部のビールとほぼ変わりません。
一方、金麦は約3.3mgで、発泡酒に近い数値です。
つまり、ビール、発泡酒、第3のビールという分類だけでは、プリン体量を判断できません。
商品ごとの成分表示を確認する必要があります。
※数値は100mL当たりの公表値・測定値の一例です。商品のリニューアルや製造時期によって変わることがあります。
350mL缶では、表示値の3.5倍です
100mL当たりの数値だけを見ると、それほど多くないように感じるかもしれません。
しかし、350mL缶を1本飲めば3.5倍、500mL缶なら5倍です。
例えば、
- ヱビス350mL:約42mg
- スーパードライ350mL:約21mg
- 麦とホップ350mL:約35mg
- 金麦350mL:約12mg
となります。
さらに、お酒の席ではビールだけでなく、焼き鳥、レバー、カツオ、干物など、プリン体の多い料理も一緒に食べます。
焼き鳥屋さんや海鮮居酒屋さんでは、
プリン体の多いお酒
+プリン体の多い料理
+アルコールによる尿酸排泄低下
+脱水
が同時に重なります。
問題は、ビールに含まれるプリン体だけではありません。
プリン体ゼロのお酒なら、たくさん飲んでも大丈夫?
そうではありません。
プリン体ゼロやプリン体の少ない商品でも、アルコールそのものが、
- 体内での尿酸産生を増やす
- 腎臓からの尿酸排泄を妨げる
- 利尿によって脱水を招く
- 食欲を刺激して食べ過ぎにつながる
といった影響を及ぼします。
「プリン体の少ない商品に変えたから安心」ではなく、最終的には飲酒量そのものを見直すことが重要です。
受診すると、すぐ薬が必要なのでしょうか?
尿酸値が7.0mg/dLを超えているからといって、全員がすぐに薬を飲むわけではありません。
治療方針は、
- 尿酸値の高さ
- 痛風発作の有無
- 痛風結節の有無
- 尿路結石の既往
- 腎機能
- 高血圧や糖尿病などの合併
- 服用中のお薬
- 生活習慣改善後の経過
などを総合して判断します。
軽度の高尿酸血症で、痛風発作や合併症がない場合には、まず飲酒、食事、体重、水分摂取などを見直しながら経過をみることがあります。
一方で、
- 痛風発作を起こしたことがある
- 尿酸値が非常に高い
- 痛風発作を繰り返している
- 痛風結節がある
- 尿路結石がある
- 腎機能が低下している
という場合には、薬による治療を検討します。
尿酸値だけを見て一律に決めるのではなく、その方の将来のリスクに合わせて判断することが大切です。
当院では、尿酸値だけでなく生活習慣病をまとめて確認します
健診で尿酸値が高いと言われた方には、健診結果の経年変化を確認し、必要に応じて、
- 尿酸値の再検査
- 腎機能
- 尿検査
- 血圧
- 血糖値・HbA1c
- LDLコレステロール・中性脂肪
- 肝機能
- 服用中のお薬
などを確認します。
高尿酸血症だけを単独で見るのではなく、高血圧、糖尿病、脂質異常症、脂肪肝、肥満などを含めて総合的に評価します。
生活習慣の改善で様子をみるのか、薬が必要なのかを、一人ひとりに合わせて判断します。
健診結果を受け取ったら、まず当院へ
尿酸値が高くても、痛風発作が起こるまでは自覚症状がほとんどありません。
しかし、痛みがないことと、放置してよいことは同じではありません。
「尿酸値が少し高いだけなので大丈夫だと思っていた」
「薬が必要なのか知りたい」
「お酒をどこまで減らせばよいのか分からない」
「腎機能やほかの生活習慣病も心配」
という方は、健診結果をご持参のうえご相談ください。
新宿イーストサイドたけうち内科は、東新宿駅A3出口直結、新宿イーストサイドスクエア地下1階にあります。
健診で尿酸値が高いと言われたら、痛風が起こる前に一度確認しましょう。












