呼吸器シリーズ 肺NTM症とは?|ニュースを見て心配になった方へ
呼吸器シリーズ
肺NTM症とは?|ニュースを見て心配になった方へ
テレビで「肺NTM症」を知り、心配になっていませんか?
昨日から今日にかけて、テレビのニュースで「肺NTM症」が相次いで取り上げられました。
厚生労働省は、毎年9月24日から30日までを「結核・呼吸器感染症予防週間」とし、2026年からは「非結核性抗酸菌(NTM)症啓発週間」も始まりました。
ニュースを見て、
「自分の長引く咳も、肺NTM症ではないでしょうか?」
「以前、健診の胸部レントゲンで影を指摘されたことがあります」
「家族にうつる病気なのでしょうか?」
と心配になり、当院へ相談に来られる方が続きました。
この記事を書いている医師について
私は病院勤務時代、肺NTM症を含む抗酸菌症の診療に長く携わってきました。
国立病院機構東京病院に勤務していた頃には、大学病院・都内主要病院などから、治療の難しい患者さんについてご相談や治療依頼を受けることもありました。
肺NTM症について国内学会・国際学会で発表した経験があり、東京大学医学部の非常勤講師として、肺NTM症に関する授業を担当していました。
その経験を踏まえ、肺NTM症がどのような病気なのか、どのような場合に検査を受けた方がよいのかを、できるだけ分かりやすくご説明します。
肺NTM症は増えていますが、必要以上に怖がる病気ではありません
肺NTM症は、近年患者さんが増えている病気です。
しかし、咳が長引いているからといって、すべての方が肺NTM症というわけではありません。
また、肺NTM症と診断されても、全員がすぐに薬による治療を始めるわけではありません。
まずは、肺NTM症がどのような病気なのかを正しく知ることから始めましょう。
肺NTM症とはどのような病気ですか?
NTMは、Non-Tuberculous Mycobacteriaの略で、日本語では「非結核性抗酸菌」と呼ばれます。
結核菌と同じ抗酸菌という仲間に含まれますが、結核菌とは異なる菌です。
NTMは特殊な菌ではなく、
- 土
- 水
- 浴室
- シャワー
- 園芸で使用する土壌
など、私たちの身近な環境に広く存在しています。
環境中のNTMを吸い込むなどして肺に入り、その一部の方に肺の感染症を起こすのが肺NTM症です。
日本では、MAC菌による「肺MAC症」が最も多くみられます。
肺NTM症は、人から人へうつるのでしょうか?
肺NTM症は、結核とは異なり、基本的に人から人へうつる病気ではありません。
肺NTM症と診断された方と一緒に食事をしたり、同じ部屋で生活したりしても、通常は感染を心配する必要はありません。
隔離も必要ありません。
ご家族や職場の方へうつすのではないかと、不安になりすぎる必要はありません。
どのような人に多い病気ですか?
肺NTM症は、特に痩せ型の中高年女性に多いことが知られています。
一方で、
- 気管支拡張症がある
- COPDがある
- 過去に結核や肺炎を経験した
- 胸郭や肺に基礎疾患がある
- 免疫を抑える薬を使用している
- 胃食道逆流がある
- 喫煙歴がある
といった方にみられることもあります。
ただし、明らかな持病がない方にも発症します。
ニュースで紹介される「痩せ型の中高年女性」に当てはまらないからといって、肺NTM症を完全に否定できるわけではありません。
肺NTM症では、どのような症状が出ますか?
肺NTM症では、次のような症状がみられることがあります。
- 長引く咳
- 痰
- 血痰
- 微熱
- 寝汗
- 倦怠感
- 食欲低下
- 体重減少
- 胸や背中の痛み
ただし、初期にはほとんど症状がない方も少なくありません。
症状がないまま、健康診断や人間ドックの胸部レントゲンで肺の影を指摘され、詳しく調べた結果、肺NTM症が見つかることもあります。
反対に、長引く咳や痰の原因は、肺NTM症だけではありません。
咳喘息、気管支喘息、感染後咳嗽、副鼻腔炎、胃食道逆流症、肺炎、結核、肺がんなど、さまざまな病気を考える必要があります。
胸部レントゲンだけで診断できますか?
胸部レントゲンで肺NTM症を疑うことはできますが、レントゲンだけで確定診断することはできません。
肺NTM症の診断では、主に次の検査を組み合わせます。
胸部レントゲン検査
肺に異常な影がないかを確認します。
肺NTM症では、小さな粒状の影、気管支拡張、浸潤影、空洞などがみられることがあります。
胸部CT検査
胸部レントゲンより詳しく、肺の内部や気管支の変化を確認します。
肺NTM症に特徴的な影の分布や、病気がどの程度広がっているかを評価するために重要です。
喀痰検査
痰の中に抗酸菌がいるかを調べます。
塗抹検査、核酸検査、培養検査などを行い、結核菌なのかNTMなのか、NTMであればどの菌種なのかを確認します。
NTMは環境中にも存在する菌なので、痰から一度検出されただけでは、直ちに肺NTM症と診断できないことがあります。
一般には、同じ種類のNTMが複数回の喀痰培養で検出されることが、診断上重要です。
また、培養検査は結果が出るまで数週間かかることがあります。
菌が見つかったら、すぐ治療を始めるのでしょうか?
肺NTM症は、菌が見つかったすべての方が、すぐに薬を飲み始める病気ではありません。
治療を始めるかどうかは、
- 症状の強さ
- 胸部CTの変化
- 病変の広がり
- 空洞の有無
- 原因となる菌の種類
- 痰から検出される菌の量
- 年齢
- 体重や栄養状態
- 持病
- 薬の副作用への耐えやすさ
- ご本人の希望
などを総合して判断します。
症状がほとんどなく、肺の影もわずかで、長期間変化していない場合には、定期的な画像検査や喀痰検査を行いながら経過を見ることがあります。
一方で、咳や痰、血痰などの症状が強い場合、肺の影が徐々に広がっている場合、空洞がある場合などには、治療を検討します。
肺NTM症の治療は長期間になります
肺NTM症の治療では、菌の種類に応じて複数の抗菌薬を組み合わせて使用します。
肺MAC症の場合には、マクロライド系抗菌薬などを含む複数の薬を長期間服用します。
治療期間は一般的な肺炎よりはるかに長く、痰の培養検査で菌が検出されなくなった後も、一定期間の治療を続ける必要があります。
長期間の治療では、
- 肝機能障害
- 視力や色覚への影響
- 聴力への影響
- 消化器症状
- 薬同士の相互作用
などにも注意が必要です。
そのため、単に菌を見つけるだけではなく、治療を始める時期と、治療を安全に続けられるかを判断することが重要です。
浴室やシャワーヘッドを徹底的に消毒すべきですか?
NTMは水回りや土壌など、身近な環境に存在します。
しかし、ニュースを見て不安になり、家中を過度に消毒したり、シャワーを使用しないようにしたりする必要はありません。
NTMに触れた方の全員が発症するわけではなく、同じ環境で生活していても発症しない方が大半です。
肺NTM症と診断された方については、病状や生活環境に応じて、浴室や園芸作業などに関する注意点を個別に考えます。
大切なのは、環境中の菌を完全に排除しようとすることではなく、症状や画像の変化を適切に確認することです。
このような方は、一度ご相談ください
次のような場合には、呼吸器内科で一度確認することをお勧めします。
- 咳や痰が数週間から1か月以上続いている
- 血痰が出た
- 微熱や寝汗が続く
- 原因不明の体重減少がある
- 健診で胸部異常陰影を指摘された
- 胸部CTで気管支拡張や小さな粒状影を指摘された
- 過去に「肺NTM症の疑い」と言われた
- 痰から抗酸菌が検出された
- 肺NTM症と診断されたが、治療を始めるべきか迷っている
- 長期間経過観察しているが、最近症状が変化した
血痰が増えている、息苦しい、高熱が続く、急に全身状態が悪化したという場合には、早めの受診が必要です。
ニュースを見て心配になった方へ
肺NTM症の患者さんが増えていることを知るのは大切です。
一方で、
「自宅のシャワーを使ったから感染した」
「咳が続いているから、自分も肺NTM症に違いない」
「肺に菌が見つかったら、すぐ長期間の治療を始めなければならない」
と必要以上に怖がる必要はありません。
肺NTM症は、症状だけでも、胸部レントゲンだけでも、痰から一度菌が出ただけでも診断できません。
まずは、現在の症状、過去の画像、胸部レントゲン、必要に応じた胸部CTや喀痰検査を組み合わせて判断します。
当院では、診察と胸部レントゲン、喀痰検査などによる初期評価を行います。
胸部CTが必要な場合には、Seeds Clinic新宿、メディカル・スキャニング東新宿などの画像診断施設と連携して検査を行います。
「ニュースを見て心配になった」
という段階でも構いません。
健診結果や過去の画像、お薬手帳などをお持ちのうえ、ご相談ください。
新宿イーストサイドたけうち内科
院長 竹内惠理保
東新宿駅A3出口直結
新宿イーストサイドスクエア地下1階
長引く咳・肺NTM症・胸部異常陰影のご相談
当院を初めて受診される方もご予約いただけます。
健診結果、過去の胸部レントゲン・CTの報告書、お薬手帳をお持ちください。
参考
カテゴリー : ブログ
投稿日 :2026年9月24日